就活・転職で失敗・後悔する新常識NG行動3選
・好きを仕事にしても幸せにならない
・給料が多くても幸せにならない
・インターンシップで適職は見つからない
「好きを仕事にしよう」「転職して収入アップ」など素敵なキャリアアドバイス、聞いたことがあると思います。しかし、この言葉を信じると失敗・後悔することが世界中の研究結果から明らかになっています。
本記事では、鈴木祐さん著「科学的な適職」から、人生で幸せを掴むために、就職活動(就活)や転職活動でやりがちなNG行動を紹介し、どうすれば幸せな人生を掴むことができるのかを解説したいと思います。
キャリアの後悔は人生の後悔
2012年にコーネル大学で行われた研究で、1500人の老人に「人生で後悔したことは?」という質問をした結果をまとめたものがあります。その結果一番多かった答えは「キャリア選択に関する未練」でした。
- 「なんで、あの会社にこだわり続けていたんだろう。転職すれば良かった。」
- 「なんで転職してしまったんだろう。前の会社に残り続ければ良かった」
- 「新卒採用のときもっと会社を厳選すれば良かった」
のような、キャリア選択に関する未練が、人生の後悔に直結する人が一番多かったようです。
同様な質問を日本の老人にした研究では
- 「働きすぎた、時間を大切にしなかった」
- 「仕事を第一にしすぎた」
- 「自分の感情を偽ってまで働いた」
のような、勤勉な日本人らしい未練が人生の後悔に直結する人が多かったようです。日本人も世界中の人も、仕事に関する後悔が人生の後悔につながることが分かります。
キャリアの後悔は、脳のバグが原因
人間の脳はいつも正確で冷静な判断が出来るわけではありません。「勘違い」「視野が狭くなる」「楽な選択をしてしまう」というバグとも言える不具合が備わっています。このバグの正体は最新の研究でほぼほぼ解明されており、そしてこのバグが人に「不幸になる職業選択をさせてしまう」のです。
脳のバグをいくつか紹介します。
利用可能性ヒューリスティック
人間が意思決定を行うときに、よく見るものや印象に残りやすいものを基準に選択を行う思考方法のことです。 人間は、意思決定を行う際に、思い出しやすいものに引っ張られた非論理的な判断を下してしまうことがあります。
例えば転職活動において、友人から、彼が働く企業を紹介してもらったとき、他の企業をよく精査せずに、そうそうに友人の働く企業に転職を決めてしまうことです。「友人の紹介だから」「友人が働いているのだからきっと良い会社だろう」と希望的観測で手軽な選択をしてしまいます。しかしいざ転職してみたら社風に馴染めなくて「こんなはずじゃなかった」と後悔することになります。
現状維持バイアス
知らないものや経験したことのないものを受け入れることに心理的な抵抗が生じ、現在の状況に固執してしまう傾向(バイアス)です。
「転職したって、今より良くなるとは限らない」といつまでも今の会社に居続けて、年老いたあとに「あのとき転職すればよかった」と後悔してしまうことがあります。
インパクトバイアス
人間が、自分自身の将来の幸福度の強弱を、実際よりも過大評価してしまうことです。
例えば新卒採用で、幼い頃から夢見た職業に就いたとしても、現実は夢見た華やかな世界ではなく、夢が叶った喜びは長続きしないことです。むしろ、理想と現実のギャップからがっかりしてしまい、その職業に就いたことを後悔してしまうこともあります。
新常識NG行動:好きを仕事にしても幸せにならない
「好きを仕事にすること」は世界中の研究で否定されています。
2015年にミシガン州立大学で行われた研究で、以下の2つのグループの人達がどちらが「幸福度」「年収」が高いかを調査しました。
- 「好きなことを仕事にすることが幸せだ」と思う人達
- 「仕事は続けるうちに好きになるものだ」と思う人達
結果は「仕事は続けるうちに好きになるものだ」と思う人達の方が、「好きなことを仕事にすることが幸せだ」と思う人達よりも、「幸福度」「年収」どちらも高いことが分かりました。
なぜこのような結果になってしまったのでしょうか?
世の中の仕事は全て華やかな一面もあれば、事務手続きや人間関係といった退屈で陰湿な一面も持ち合わせています。「好きな仕事」を求める気持ちが強い人達は、退屈で陰湿な仕事の一面に、理想と現実のギャップを感じてガッカリしてしまうのです。いわゆるインパクトバイアスです。

好きを仕事にするとスキルも伸びない
オックスフォード大学が行った別の研究によると「仕事は仕事、と割り切っている」人達は、「好きを仕事にする」人達よりも、仕事のスキルが伸びるということが分かっています。
このような結果になったのは、ミシガン州立大学の研究結果と同じ理由です。
「好きを仕事に」のタイプの人達は、退屈な事務職や陰湿な人間関係から「この仕事は好きじゃないかも」「この仕事は向いていないかも」とモチベーションが上がらず、スキルも伸びないのです。一方で「仕事は仕事」派は割り切っているので、退屈で陰湿な仕事で落ち込むこともないので、淡々とスキルを伸ばすことができるのです。
天職は後からついてくる
2014年にロイファナ大学が多くの起業家に「天職に就くことが出来たのは何故か?」と質問した研究があります。その結果「最初から自分の仕事を天職だと考えていた人」はほぼいませんでした。彼らの大半は、最初はなんとなく仕事を始め、それに努力をつぎ込むうちに情熱が高まり天職に変わっていったそうです。
つまり天職とは、白馬の王子さまのようにこの世のどこかであなたを待っているわけではなく、あなたが目の前の仕事に努力を重ね情熱を捧げることで自然と天職に変わっていくものなのです。
このように、労力と時間を重ねることで情熱が少しずつ高まることを心理学の世界では「グロウス・パッション」と呼ばれています。
「好きを仕事に」のスピーチで有名なスティーブジョブスも、エレクトロニクスの道を歩み始めたのは「楽して儲かる」という広告がきっかけです。もしジョブスが本当に好きなことを仕事にしていたら、彼はスピリチュアルなことに興味をもっていたので、インドの山奥で僧侶になっていたのかもしれません。
同じく歴史的な偉人が「好きを仕事に」していたら、ゴッホは聖職者に、ココ・シャネルは売れない歌手に、ナポレオンは無名の小説家になって生涯を終えていたでしょう。
新常識NG行動:給料が多くても幸せにならない
「給料の多さと、幸福や仕事の満足度はほぼ関係がない」ことが世界中の研究で明らかになっています。
2010年にフロリダ大学が、アメリカ、日本、インド、タイの86件の先行研究を調査した結果を発表しました。この調査方法はメタ分析と呼ばれ、大量のデータを分析しているので数ある研究手法の中でも、最も正解に近い結論を出すことができます。
このメタ分析によると、給料の多さと仕事の満足度は相関関係が無いということが明らかになりました。
相関関係を表す数値として「相関係数」というものがあります。この数字が1に近いほど強い関係があるとされ、0.5以上あれば「関係がある」と判断されます。
例えば「人は、生まれつきの性格に沿った行動をするか」の相関係数は0.9になります。生まれつき内向的な人は積極的にパーティに行かないですし、生まれつき好奇心の強い人は海外旅行に積極的に出向くことは、感覚からも分かると思います。
話を「給料の多さと、仕事の満足度」の相関関係の話に戻します。「給料の多さと、仕事の満足度」の相関係数は0.15しかありません。
年収800万円が幸せのピーク
ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンの研究によると「年収800万円が幸福のピーク」と言われています。この説は、日本の最新の調査でも同じような結果となっています。令和元年に内閣府が発表した調査で、以下のことが明らかになっています。
- 年収300〜500万円:年収が上がるほど、幸福度も上がる
- 年収500〜800万円:年収が上がっても、幸福度が上がりにくくなる
- 年収800〜900万円:年収が上がっても、幸福度はほぼ横ばい
- 年収900万円〜:年収が上がっても、時には幸福度が下がることがある
給料アップの幸せは1年しかもたない
33,500件の年収データを分析したバーゼル大学の調査によると、大半の人は給料がアップした直後に大きく幸福度が上がり、1年が過ぎた後から幸福度は急降下を始めます。そして3年もすれば、幸福度はもとのレベルまで戻るそうです。このようになってしまう理由を説明します。
1つ目の理由は「人間は贅沢に慣れてしまう」ということです。年収が増えると、贅沢が出来るようになります。しかし贅沢が続くと人間はそれに慣れてしまうので、幸福度はもとに戻ってしまうのです。「一度広い部屋に引っ越したらもとのワンルームには戻れない」「一度お掃除ロボットを買ってしまうとお掃除ロボットの無い生活に戻れない」など皆さんの経験からも納得だと思います。
2つ目の理由は「お金による幸福は相対的に決まりやすい」ということです。そもそも、人はなぜ収入が上がると嬉しいのでしょうか?それは、収入の絶対値でなく周りの人のもらっている収入と比較してしまうからです。同期よりも早く出世すれば「自分が優秀である」ことが証明されて嬉しいのです。しかし「上には上がいる」という言葉もあるとおり、収入が増えると自分よりもっと収入の高い人と自分を比較してしまいます。これにより幸福度が下がってしまうのです。これは心理学では「ランク所得説」と呼ばれる有名な心理現象です。
給料アップより、手軽に幸せになる方法
お金を稼ぐより、手軽に60倍も幸せになれる方法があるのです。2005年に行われた調査によると、健康レベルが「普通」から「ちょっと体調が良い」に改善すると、収入アップから得られる幸福の60倍以上の幸福が得られるということが分かっています。
お金を稼いで幸せになるより、ちょっと健康的な生活をすることの方がコスパ良く、手軽に幸せになれるのです。

あなたが健康になるためのデバイスとして「Fitbit」を、健康な身体づくりをサポートするサプリとして「マイプロテイン」を私おすすめしています。詳しくは、コチラの記事にまとめています。もしよければ、こちらも合わせてご覧ください。
新常識NG行動:インターンシップで適職は見つからない
インターンシップは今や就活生の定番として定着していますが、残念ながらインターンシップであなたの適職は見つかりません。
心理学者のフランク・シュミットとジョン・ハンターは、過去100年の職業選択リサーチをメタ分析しました。そして「インターンシップ」「面接」「学歴」「前職の経歴」など日本の就職活動で定番の検査方法で、適職を見つけることができるか?を明らかにしました。
このメタ分析により「就職活動で実施される様々な検査方法で適職を見つけることができるか」を、先に触れた「相関係数」を使って順位付けしています。この数字が1に近いほど強い関係があるとされ、0.5以上あれば「関係がある」と判断されます。
- 1位:ワークサンプルテスト(相関係数0.54)
- 2位:IQテスト(相関係数0.51)
- 2位:構造的面接(相関係数0.51)
- (中略)
- 6位:インターンシップ(相関係数0.44)
- 7位:正直度テスト(相関係数0.41)
- 8位:普通の面接(相関係数0.38)
- 9位:前職の経歴(相関係数0.18)
- 10位:学歴(相関係数0.1)
相関係数が0.5以上で「関係がある」と言えるのは上の3つのみです。日本の就職・転職活動の定番である「インターンシップ」「普通の面接」「前職の経歴」「学歴」は、どの手法も就職後にあなたがパフォーマンスを十分に発揮できるかを測るのには役に立たないということです。
「インターンシップ」で良い実感を得られたからといって、その企業に就職したあとに活躍できるかは、全く関係ありません。
これは、仕事でのパフォーマンスを左右する変数が多すぎるためです。現実の仕事は「面接」や「筆記試験」や「インターンシップ」のように単純ではありません。コミュニケーション力、創造力、ストレス耐性、感情コントロール力、論理的思考力など数多くのスキルを複合的に組み合わせながら実際の仕事は行われます。また、業種、職種、職場によって求められるスキルの組み合わせとバランスはそれぞれ異なります。このような複雑極まりないスキルを、たった数回のテストや面接で見抜くことなど不可能です。
ちなみに、ワークサンプルテストとは実際の会社の業務に似たタスクを事前にこなし、その成績で評価する手法で、日本の就職・転職活動ではあまり馴染みがない手法です。つまり、日本企業の就職試験では、あなたが入社後に活躍できるかは分からないということです。

幸せになるためには、何に気をつけたら良いか?
幸せを掴むため、不幸にならないためには、以上のNG行動をせず、その逆の行動を取りましょう。
NG行動:好きを仕事にしてはいけない。
逆行動:本人の希望に沿わない部署で働く人がその仕事に情熱を捧いでいるか?企業が各従業員が自分の担当業務に誇りを持てるようなサポートをしているか?を確認する。
NG行動:給料の多さで就職先を選ばない。
逆行動:過剰な残業時間や夜勤、休日出勤など健康に悪影響のある働き方になっていないか?禁煙やメタボ対策など、従業員の健康増進を手助けする取り組みをしているか?を確認する。
NG行動:インターンシップの結果を鵜呑みにしない。
逆行動:コミュニケーション力、創造力、ストレス耐性、感情コントロール力、論理的思考力などのビジネススキルの中で、その企業が重要するスキルは何か?それをあなたは持ち合わせているか?を確認する。入社後、それらスキルを磨く研修などの制度が整っているか?を確認する。
最後に
就活・転職で失敗・後悔する新常識NG行動3選を解説し、どうしたら人生の幸せに繋がる職業選択ができるかを紹介しました。本記事は鈴木祐さん著「科学的な適職」を参考にしています。本記事は本書のごく一部を紹介したに過ぎません。この他にも多くの人が陥ってしまうNGを行動と、逆にどうしたら正しい職業選択が出来るかが解説されています。
本ブログでは、就職活動・転職活動に役立つ情報を発信しています。
