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RANGE(レンジ)知識の幅が最強の武器になる:教養として現代人が読むべき一冊

RANGE(レンジ)知識の幅が最強の武器になる:教養として現代人が読むべき一冊 人生を豊かにする本の要約
RANGE(レンジ)知識の幅が最強の武器になる:教養として現代人が読むべき一冊



本書の要約
・現代人はロジャー・フェデラー方式で知識の幅を増やせ
・知識の幅は「1つの専門分野の知識を他の専門分野でも活かす力」
・知識の幅を広げる訓練には「フェルミ推定」がおすすめ
・知識の幅を広げる習慣は「他者にゆだねる」「慣れ親しんだツールを捨てる」




タイガー・ウッズ vs ロジャー・フェデラー

本書の目次を開くと一番初めの章が「タイガー・ウッズ vs ロジャー・フェデラー」という名前になっており、「おっ!なんだぁ?」と一気に興味惹かれます。

タイガー・ウッズもロジャー・フェデラーも皆さんご存知だと思います。ゴルフ、テニスの世界でそれぞれレジェンドと呼ばれるほどに活躍している世界的スターです。「タイガー・ウッズ vs ロジャー・フェデラー」では彼らの能力の開発の過程の違いがクローズアップされています。

タイガー・ウッズは、幼いころから両親にゴルフの才能を見出され、そのままゴルフを極めた言わばスペシャリストです。一方でロジャー・フェデラーは幼いころはバスケットボールやサッカーなどの様々なスポーツを体験して、少年期にテニスに出会います。プロテニスプレーヤーの中ではテニスをスタートした時期は早いとは言えません。

幼い頃から1つの専門性に絞ったタイガー・ウッズと、様々な経験を経てから自分に合う専門性を見つけたロジャー・フェデラー、どちらが私達現代人が参考にすべきでモデルでしょうか?本書ではロジャー・フェデラーの方法こそが良いとしています。

RANGE(レンジ)知識の幅が最強の武器になる:教養として現代人が読むべき一冊

ゴルフは、スポーツの中でも同じシチュエーションが起こりやすいスポーツだと言われています。「グリーン手前に池、奥がバンカーのショートホール」「右ドッグレッグのロングホール」「あごの高いバンカーからの脱出」…ゴルフを経験している人なら心当たりがあると思います。素人でもこのような「あるある」なシチュエーションに何度も巡り合います。そんな同じシチュエーションが起こりやすい(再現性の高い)競技に関しては、幼いころから専門性を極める方法は有効です。

一方で、テニスのような対戦型スポーツでは、同じシチュエーションというのは滅多に起きません。コートの材質も、対戦相手の国籍も、時刻も、自分が1打前に打った球も、相手が打ち返した球も、今まさに自分が打つ球も…毎回異なるシチュエーションになります。このように同じシチュエーションが起こりにくい(再現性)の低い競技では、その場の機転や他の人生経験を応用する技術が求められるため、本命の競技以外のスポーツの経験が活かされるのです。

今の変化の激しい時代を生きる現代人にこれを当てはめて考えましょう。若い頃から専門性を狭めすぎると、思考の幅が狭まってしまうことや、大人になってから若い頃に決めた専門性が自分にあっていないことに気づいて専門性を変えるパターンが少なくないと言います。

知識の幅とは?

ロジャー・フェデラーのような、その場で機転を利かせたり、人生経験を応用する力が「知識の幅」です。

知識の幅と言われると「他分野の知識を持つこと」のように捉えられがちですが、本書では少し異なります。本書では「1つの専門分野の知識を他の専門分野でも活かす力、言い換えれば抽象的に考える力」のように定義しています。

知識の幅があると、遠く離れた領域やアイディアを結び付けて新たな発見や、価値ある提案ができるようになるのです。

本書では現在の科学のように「細かくカテゴリ分けされて専門性が細分化された状態」を「科学のメガネ」と読んでいます。「科学のメガネ」を掛けたままでは、1つの分野の知識を他の分野に応用することができません。現に歴史的発見をした科学者の多くは、元々は別のバックグラウンドがあったことが本書で明らかになっています。

私たちも「科学のメガネ」を外すことができれば分野を横断して自分の能力を大いに発揮することができるのです。

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若すぎるころに専門性を決めてしまうことの危険性

本書では若い内に専門性を決めてしまうことの危険性を何度も述べています。ここで言う若い頃とは具体的には大学に入学するまでのことを指します。とくに大学選びで専門性の高すぎる大学に進学することの危険性は何度も言及されています。

日本でもそうですが、世界中の大学は今や専門性が細分化されており、入学時に専門性が決まってしまうような大学も少なくありません。アメリカの大学卒業者の75%は専攻した学問とは無関係な仕事についています。にも関わらず大学では専攻した学問でしか使えないツールだけに熟達するように教育されます。

イギリスの調査によると、大学入学時に専攻を決める大学に入学した学生は、大学入学後にすくなくとも1年は広い分野を学び、そのあと進級の過程で自分の専攻を選ぶ大学の学生に対し、就職後に転職する可能性が高く、また生涯賃金も低いということがわかっています。

多くの人が早すぎるタイミングで自分の専攻を決めてしまう理由が本書では大きく2つ示されています。

1つ目は、多くの人が自分自身の興味や得意分野が5年後も10年後も変わらないという勘違いをしていること。

2つ目は、多くの人が昨日も明日も世界は変わらないという勘違いをしていることです。

20年前の世界ではこの考えでも良かったでしょうが、今は世界の変化が加速度的に早くなっています。次々に新しい技術や革新が起き、私達の生活や仕事は目まぐるしく変わっています。私達に必要なのは、早い内から専門性を高めて技術や知識を磨くことではなく、どんな変化があっても対応できるように知識の幅を広げることにあるのです。

本書では、若い頃に専門性を絞らずに大成した著名人を何人も紹介されています。冒頭で紹介したプロテニスプレーヤーのロジャー・フェデラー、チェロ演奏家のヨーヨー・マ、ジャズとクラシックの演奏家のジャック・セッチーニ、印象派の画家ファン・ゴッホなどです。

思考の幅で世紀の大発見

16世紀のドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーをご存知でしょうか?

ケプラーは天文学物理学の先駆け的存在と言われています。ケプラーは彼の約100年後にアイザック・ニュートンが万有引力の法則を見つける前に重力の存在を発見していました。

ではケプラーはどうやって重力の存在を発見したのでしょうか?そこに「知識の幅」が大きく関係しているのです。

ケプラーが生きていた時代は、まだ地球が世界の中心という考えが信じられていた時代でした。宇宙は精霊の力で動き、惑星が不動の地球の周りを動き、それが永遠に続くと信じられていました。ポーランドの天文学者ニコラス・コペルニクスは惑星が太陽の周りを回っている天動説を唱えましたが、当時はその考え方は正当ではないとされ異端として火刑に処されました。

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ある時ケプラーはカシオペア座の超新星爆発が確認されたときに、この「永遠に続く宇宙」は正しくないと思うようになりました。そしてコペルニクスの天動説を受け入れるようになります。

しかし、天動説を信じるとさらに疑問が湧いてきます。太陽から遠い惑星は何故かゆっくりと動いているのです。それは何故か?偶然か?必然か?当時は天動説すら異端の考え方だったので、この疑問を解くようなヒントは存在しません。そこでケプラーはアナロジー(様々な事柄の間の共通点を見つける)という方法を使うことにします。

においや熱は発生源から離れると消散する。太陽から発せられるなにかが惑星を動かしているのかもしれない。光はまっすぐあらゆる方向に進む、磁力は違う極を引きつけたり、同じ極同士を引き離したりする。このような考えから始まり、ケプラーは長い知的放浪の末に重力という考えに行き着きます。

ここで登場した「アナロジー」こそが知識の幅を活用した例になります。最新の研究でも知識の幅を使うことで一見予測不可能なことを言い当てることができるということがわかっています。その中でもとくに有名な手法に「フェルミ推定」があります。フェルミ推定とは「町中には何台のタクシーが走っているか」「カリフォルニアにはピアノ調律師が何人いるか」のような一見わかりようのない数字を導き出す手法です。

フェルミ推定は、抽象的に考える力を鍛える方法としても有名で、日本でも外資系コンサル企業の採用面接などで利用されています。本ブログではフェルミ推定の方法も解説していますので、もしよければこちらの記事もご覧ください。

知識の幅を身につける習慣

プログラマーであり作家のポール・グレアムは自身の出身高校の卒業生に次のようなスピーチを残しています。

自分が何をしたいのかは簡単に分かるような気がするが実は難しい。私がしてきた仕事の大半は10年前には存在しなかった。このような世の中でやりたいことをきっちり決めてしまうのは賢明ではありません。先の目標から逆算してスタートするのではなく、今有望な状況からスタートしましょう。成功した人の多くはそうしてきました。


繰り返しになりますが、早くに自分の専門を決めてしまうことは賢明ではないと言われています。もし、大学の進路や就職先に悩んでいるのであれば、今やりたいことの専門性を深めるのではなく「幅広く学べるか?」という視点で選んでみてはいかがでしょうか?

他者に委ねる

「もうすでに就職して働いている人はどうすれば良いのか?」と思われるかもしれません。本書では社会人でもできる知識の幅を身につけるアクションがいくつも触れられています。(働きながら他分野に挑戦してみるという当たり前の話は除きます)

心理学者のジョナサン・バロンは優れたチームのやり取りの特徴に「オープンマインド」があると言います。優秀な予測者は自分の案を「テストする必要のある仮説」として見ています。チームで自分の案を披露するときに、他者を納得させるのではなく、他者が自分の案を指摘してくれるように促します

人間の脳はよくできているので自分の説を裏付ける証拠を見つけることは簡単にできますが、自分の説を否定する証拠を見つけることはできないのです。

そこで他者にそこを補ってもらうことで、幅広い知識に触れながら、あなたの案をよりよいものにブラッシュアップすることができるのです。

慣れ親しんだツールを捨てる

もう1つ社会人になってもできる知識の幅を身につける方法に「慣れ親しんだツールを捨てる」という方法があります。

本書では慣れ親しんだツールを捨てられずに失敗した例としてNASAのチャレンジャー号の爆発事故が挙げれれています。

チャレンジャーの爆発事故とは、冬の寒い日にロケットのつなぎ目にあるOリングから燃料が漏れてしまいロケットが爆発してしまった事故です。Oリングはロケット(金属)をつなぐゴムでできた素材です。気温が低い寒い日だと、ゴムが固くなってしまい、ロケットのつなぎ目をうまく塞ぐことができなくなってしまいます。それにより、Oリングとロケットの素材の間に隙間ができてしまったというわけです。驚くべきことに実はNASAは打ち上げ前に、事故の可能性を示唆する情報があったにも関わらず、事故を起こしてしまったのです。

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では、なぜNASAは事故を起こしてしまたのでしょうか?

そこにはNASAの文化が深く関係していたと言われています。NASAのモットーの1つに「我々は神を信じる。他の人はデータを持ってきなさい」というものがあります。NASAは古くからデータ至上主義で数値で証明できないものは排他される文化がありました。

チャレンジャー号打ち上げ前の打ち上げをするかしないかの打ち合わせのとき、エンジニアは冬の寒い日に打ち上げすることは避けたほうがいいと提案しました。

しかし彼らが当時持っていた情報は数値で表せるようなものではなく、過去の経験や、寒い日に打ち上げたロケットのOリングの写真だけでした。そのため数値で示すことができなかったので彼らの提案は却下されてしまいました。

NASAは「データ至上主義」という慣れ親しんだツールを捨てられなかったために、チャレンジャー号の事故を起こしてしまったのです。

よく「人は過去に経験した方法でしか課題を解決できない」と言われますがチャレンジャー号の事故もまさにその通りです。私達も新しいことにチャレンジするときには、今まで使ってきた慣れ親しんだツールを捨てる勇気が必要です。

「今まではこれでうまくいっていた」「私には経験がある」という考え方がいかに危険か、ご理解いただけたのではないでしょうか?

自分自身の経験を振り返ってみましょう。きっと「慣れ親しんだツールを捨てられなかったために失敗した」経験があると思います。

RANGE(レンジ)知識の幅が最強の武器になる:教養として現代人が読むべき一冊

まとめ

本書の要約
・現代人はロジャー・フェデラー方式で知識の幅を増やせ
・知識の幅は「1つの専門分野の知識を他の専門分野でも活かす力、言い換えれば抽象的に考える力」
・知識の幅を広げる訓練には「フェルミ推定」がおすすめ
・知識の幅を広げる習慣は「他者にゆだねる」「慣れ親しんだツールを捨てる」